朝テントをたたんでいると、「もう出発ですか」と20メートルとなりのライダーから声。「ここはいいところですね〜、もう一日いたいけど今日は函館にいくつもりです」と返す。聞けば九州からはるばる1月半ほど旅してる、という。テントとタープの使い方、配置が上手だからたぶん長旅ベテランだとにらんでいたがやっぱりね。慣れてくるとテントの張り方ですぐわかるんだな。バイクは真っ赤なレプリカタイプで、これだけの装備をもって長旅するのは相当な腕前。どうりでテント場づくりもうまいはず。
彼にちかくに「花沢温泉」という200円で入れる風呂屋が消防署の裏にあるときいて、朝風呂としゃれこむことに。200円なら地元用で、地元用なら いいにきまってる。一度きたときここに泊まって、いま帰路だがまだ数日ここにいるという彼にわかれて走ってみるとなるほど、ここは気持ちのいい牧場の丘な んだね。江差のほうへのみはらしもいい。
妙な塔がたっているのでいってみると、360度見渡せるようになっている。ただこの塔自体はなんだかようわからん なあ。記念塔と展望台をあわせたような。それにしてはてっぺんまでは行けないで中途半端だし。ただの記念にしてはばかでかいし。アテネ像といいこの塔とい いこのあたりの人はこういうものをつくる趣味があるのか(・・?)。
ふもとの「道の駅」で消防署の有り場所をきいて温泉へ。すぐわかったが通りからは入っているから知らないと無理だね。なーるほど、みるからになにげない平 屋建ての地元の人用なんだろうな。確かに200円。おばさんは「昔はもっとお客がきたんだけどねえ。いい温泉?いいかどうかはいってみなきゃわからんべ さ」なんていう。商売っけゼロだな。よろしよろし。こういうの大好き。いい風呂だったよ。きのう入ってなかったから余計にさっぱりして元気回復。
まだ早すぎるからそのまま函館にいくのも芸がないな。このあたりには道南最長のダートとかいうのがあったからそれを試してみようか、と地図をみながら検討 したのだが、ガソリンをいれたところのオジサンは「その道はとおれね」という。ほんとかなあ、とおもったんだが、40キロのダートで途中なんかあって引き 返すってのはちょっとやだなあ、別におもしろい道もあるかも、と日和る。結果は失敗で木古内に抜ける道はまったくおもしろくもなんともなかった。
木古内の海岸で昼寝して、夕方函館のライダーハウス「ウィロビー」につく。このオーナーの高橋氏は整体師で、冬になるとサーフィンしに豪州に出稼ぎにいく という良い人生を送っている。「寂れたこのあたりを活気づけたい」とはじめたライダーハウスは半分道楽みたいなもの。でも、元気いっぱいの女の子がリック もって「ありがとうございました」と大声でお礼をいって出発するのとすれ違ったが、なるほど眠ったような古い町に若い旅人の活気がおもしろいコントラスト である。独特のへたくそなバイクの絵も愛嬌があってたのしい。
ここで治療を受けると1000円の宿泊費が半額になったりする。丁度北海道を去る前にいちど老体のお手入れをお願いするのにいいのである。しっかり治療し て貰ったら首がよく回るようになった。右肩がこっていて、ふりむく角度が浅かったのがクルクルまわる。スゴイね。夜はいっしょにビールのみにいってオダを あげて北海道サヨナラパーティ。 しかし、函館は蒸し暑いなあ。これでも本州よりだいぶマシなはずだから本州は酷いみたいだ。家人からのメールによると東京はすざまじい暑さだという。「あ ついからまだ帰らない」といっていた今朝の九州のライダーは正解みたい。おれははやまったか。
執筆者: Jun