Soldier's Guide to the Japanese Army

─ 日本軍との戦いに向かう米兵が読んだ資料 ─

DIGIHOUNDが提供する戦史資料。一体、日本の情報はどう筒抜けだったのか。或いは、どうやって、どの程度が、米兵に理解されていたのか。そうしたことの一端を示すのが、1944年11月15日に米軍情報部が発行したこの資料(A5版182ページ)である。

実物は、米テキサス州で催されていたガン・ショウで展示販売されていたところを購入したもので、現在は、寄贈した岩手県衣川のNPO法人太平洋戦史館に展示されている。

ガン・ショウでは、ライフル ─ 三八式なども、コレクションの対象として展示販売されていた。良く見ると、菊の紋章が刻印されており、それが、上から削り取られていた。武器は天皇から預けられたもので、その印として菊の紋章が入っていた。だから、敵軍の手に渡る前に、菊の紋章を削り取ったのだという。そうしたライフルや軍刀などの脇に、古い資料が山積されており、中にポツンと、この一冊があった。

ここで、その一部をご紹介しよう。二度と、悲劇を、間違いを繰り返さないために─


本資料中の情報源に関する考察

本資料の発行は1944年の11月15日。この年の8月上旬が、米軍のガタルカナル上陸作戦発動日だ。実際のガタルカナル戦線への米軍の攻撃が開始されたのは8月7日のツラギとカブツ島から。洞窟陣地で激しく抵抗した日本軍だったが、米軍は圧倒的優位で、ガタルカナル島には無血上陸を果たす。

そして、その時に得た陣地資料などを材料として、この冊子の陣形ページなどを作った、という推測もできないではない。だが、気になるのは所要時間だ。

11月15日に発行する資料の掲載内容を8月初旬に得た情報から吟味し、数ページの情報として執筆・編纂し上げていることになる。これでは、冊数が少なかったのも無理からぬことだ。写真や図版を整理し発行するまでの、このタイムラグ。仮定が正しいとしたら、情報部スタッフの編纂能力や、いかばかりか。

週刊誌や月刊誌を編集している編集者は、もちろん大変短いスパンで冊子を編纂し上げる。が、太平洋上の島々に起きている情報を現場で集め、輸送し、吟味し、対戦する兵士に予備知識として配るべく執筆編集し、印刷から配布まで、僅か3ヶ月、ということになる。

あくまでも仮定・想像だが、優れた情報将校の存在が連想できるのではないだろうか。


■ 冒頭部分 ■

奥付 表紙裏扉の注意書き。「部数稀少のためまわし読みするように」とある。


軍事教練 高等学校の軍事教練の様子


■ 衣類・装備 ■

勲章 将校勲章の形式と、勲章を胸にした将校

制服に関する記述ページ。地下足袋の掲載や、徴兵出陣の様子も
兵士へ配給される衣類のリスト 兵卒の服装 地下足袋 徴兵出陣 多くの特殊衣料が気候風土に応じて配給された。大規模な冬服の開発と配布は古く1932年、満州の占領に伴ってはじめられた。 ベルリンの日本人将校 防寒服着用の日本兵


■ 所得 ■

給与表 階級別給与表 仕官から一兵卒に至るまでの給与一覧


■ 食事 ■

栄養値分析まで仔細に渡る。(長期戦になった場合に出て来る症状などが推測可)

軍用食分析 -固形食 (堅パンのことか?) はパラシュート部隊のみ- 左の表の部分の拡大画面 ARMY RATIONS - 日本陸軍の食事については多くの誤解がある… 脚気予防のために麦を混ぜたが… 写真・調理ストーブと給餌を待つ行列

[本文から]
(ニューギニア戦線で)大隊は、三日分の新鮮な食料と四日分の調理済み食料─合計2.98トンを担いで行軍した。他の歩兵連隊の例では、非常食料四日分を含む十日分の食料を担いでいた。しかし、日本軍は行軍の際には五日分しか携えていない。戦いの初期において、梱包が非常に劣っており、このため、缶詰や乾燥食が失われた。大きな改善が報告されているが、それはつい最近のことだ。

ピストル ─ 南部8mmピストルは一見ドイツのルガーに似てるが、そのメカニズムは全く異なる。(このページは上の制服の項の冒頭と同じ)


■ 小火器に関する記述 ■
26型9mm 14型8mm 南部8mm ピストル ショルダーストックを装着した南部8mm 南部と14型8mmピストル比較 九四型 8mm オートマティック ピストル仕様表 / ライフル ビストル仕様表(拡大)

「ナンブはドイツのルガーを新しくしたかのようだが、内容は全く異なる。」─敵軍のピストル操作についても、それが扱えるように解説されている。

三八式6.5mmライフルと三八式6.5mmカービン銃 四四式6.5mm カービン銃 九七式 6.5mm 狙撃銃 と 九九式ライフル ライフル仕様表 ライフル仕様表 (拡大)


■ 大砲(一部)・戦車 ■

九二式105mm 大砲仕様 九二式戦車 九七式戦車 仕様表


■ 行動分析・陣形分析 ■

日本軍の行動 攻撃態勢 日本軍の歩兵は本質的に敵対者よりも秀でている。作戦行動における行動は迅速で、ハンド・トゥ・ハンドの戦いに持ち込むのに卓越しているといわれている… 会議予定は指揮官により慎重に選ばれる。日本軍は普通二列で進軍するが… 攻撃の姿勢 貴様ら欧米人は昼は進軍し、夜通し休息して、夜明けに疲れた兵士で攻撃をはじめる。我々日本軍人は… 日本軍が好む夜襲の時間は暗くなってすぐと夜明け前である。 夜襲はしばしば小隊などの単体で行われる。
守勢もまた、日本軍人にとってとても不愉快なことだ 反撃 撤兵 防衛 防衛陣形 うまく仕立てて隠されている弾薬箱 日本軍のマシンガン砲床 Torokinaで防衛に使われた弾薬箱
左:Bunaの弾薬箱 右:Guamのコンクリート製弾薬庫 左:サイパンの建物下弾薬庫 右:タラワの金属製弾薬庫 タラワの弾薬庫入り口 タラワの弾薬庫の銃眼 日本軍の掩蔽壕 ジャングルでの普段の偵察は、選抜され訓練された兵士が案内する。 二者択一の状況では、日本軍は敵戦線の手薄なところに探りを入れる。
守勢 ─ 日本軍のジャングルでの守勢は、一般的な兵学上の基本の応用に準じると考えている。 砲兵隊と戦車の戦術 最大の動機は、日本軍の発想では、主な任務は歩兵の直接援護であることから、大砲の据付位置をできるだけ戦線の前に出すことである。 少なくとも四つの戦車部隊が戦争勃発時に存在し、恐らく増強されているであろう… 防御においては、日本の戦車は通常、反撃時の歩兵に伴わせるべく、意識的に温存されている。 左:傘型の仕掛け爆弾 右:懐中電灯型の仕掛け爆弾 仕掛け爆弾と地雷  日本軍の仕掛け爆弾はドイツ軍のそれに比べるとさほど使われてはいないが…

 


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