JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
子どもたちも気に入っていたジムニーを売っ払い、強引に乗り換えたパトロール。 我が家のファミリーカーとして根付かせようと企画した日光方面ドライブは難関の志津林道に入り込み、さらに酷暑と雷雨に見舞われた。
、、子供たちのパトロールの印象は「あつい」「怖い」「雨に濡れる」という惨憺たるものだった。それを挽回しようと純白の世界を求め冬の富士山に向かった。 素直にスキー場にでも行けばいいのに、結局ずるずると精進湖林道に入り込む。
志津林道の挽回を念じて4輪チェーンで臨むことにする。最初はフロントに巻くが歯がたたない、ならば全輪チェーンで万全を期す。 子供たちは精進湖林道の悪魔的風貌に呑まれ「いやだいやだ」と騒ぎだす。
全輪チェーンで、これでどうだ、と思ったがそうは問屋が下さない。全く歯が立たないことは同じである、仕方なくまたウインチで前進の破目になる。これならばという場所まできてワイヤーをしまい、再発進を試みるが不甲斐ない。
呆れるほどのウインチの連続で歩いたほうが余程速い。この体たらくでは五合目の大展望は程遠いとふてくされ、ターンする。子供たちは大喜びであるが、私はスパルタンな4駆のこの有様に憤懣やるかたない。
帰りの一般道で憂さ晴らしにP型をぶん回すとさすが4リッター130psの片鱗を見せる。コーナーはロールしないし(これが曲者ではあるが)、ささやく6気筒の気品もある。オンロードの快適さとクロスカントリーの性能が両立しないのは無理からぬ事だがもう少し何とかならぬものかと思った。
しかし精進湖林道は考えられる最悪の舞台である、志津林道もかなりのもので両雄と言えるだろう。いくらなんでもファミリードライブで行く所ではないしパトロールG60Hには場違いなのだ。
G60-Hの「H」とはヘビイの意味である。当初はヘビイデューティな造りみたいで嬉しかったのだが、何のことはない積載量が750kgになっただけである。ロングホイールベースにして後席を取っ払い、ガチガチのリーフにアンチロールバーを装備し、トラックに徹したモデルである。そんなのがオフロードをまともに走る訳がない。しかし勘違いしてはいけないのは、それがパトロールの評価を左右するものではないということだ。 ともすればクロスカントリー能力が最上位に評価されるべきと思いがちであるがそれは趣味ならばこそである。精進湖林道や志津林道を空身で走ることなどG60-Hには想定外のことであろう。
G60Hは750kgを積んで悪路を含む一般道を無事に走るということで評価するのが本筋であろう。しかしそういうステージが日本にあるだろうか、そのことに私達は感謝しなければいけない。 実際これほど業務用が強く、鉄板ドアなのに施錠できないなんていう車を私は他に知らない。
結局ファミリーカーとしてのパトロールは我が家には根付かなかった。J36の三倍近い燃費は主婦感覚には理不尽なものであり、静かさもサウンドも情状にはならない。実際それは同じエンジンで倍の重量の4W73キャリアーとも、それ程変らないのが不思議であった。なんとか加速ポンプを作動させないような走り方を心掛けてもあまり改善しなかった。 FJ40の経験ではケチな走りをするとリッター当り7-8Kmも走ったからP型の方が大喰らいのようである。ダートの走りもスタビライザーを外してリーフ抜きでもすれば改善するだろうが、私にはそこまでのオフ嗜好は無かった。
カスタムパーツも皆無であり、いじりようもなかった、CJ3Aやアーリーブロンコにさえ設定のあったベストップもパトロールには手を出さなかった。
私のG60-Hは錆び一つない極上の程度だった。もう30年の彼方だから存命していないかもしれない。
しかしその面影はいまも私の脳裏に鮮明である。その薄いブルーの質感には、幼かった子供たちの感触が沁みついているからである。
執筆者: kazama
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