JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
Jeepに乗ると高揚する。単なる移動手段ではなく、半ばジープに乗るのが目的になる。
今となれば無意味な無骨さ、片意地張って時代に逆らい、昔気質で通しているようなものだ。
いまどきこれほどの荒削りで素っ気ない乗り物があるだろうか。
この車の鉄板むき出しのキャビンに座っていると、その質実剛健な精神が沁みてくる。
もちろん設計当時にそんなコンセプトで作ったわけも無く、世情のほうが変わってきて
飾り気やまったく迎合のない様相がそんな風に思えてきただけだ。
質実というのは理想像であって、この車に乗るとき、俺もこんな風な男になりたいと思う。
車からそんな影響を永年にわたり受けてきた私がそうなったかどうか
少なくとも偏屈になったのはそのせいではないかと思える。
--- Jeep Landscape ---
風景をそのまま見るより、窓越しのほうか良い風景に見えることがある。
絵画を額装すると引き立つのと同じである。このことは居住するようになった人間の心理の名残であり、
安全な領域を得て、初めて風景を楽しめるようになったのではないか。
このごついジープのウインドフレーム枠は、かなり安心感のある、とびきり上等な額である。
ここから見る風景は、より厳しい、荒削りな自然が似合う。
そんな風景を求め、このウインドから、いったい何度眺めたろうか、
そして、そんな風景を理想とする感性に、しだいに染められてきたように思う。
--- Jeep Cockpit ---
この眺めこそジープの絶景ではないかと思う。
トラックのような長いシフトレバーのほかに、なにやらややこしそうなレバーが2本もあって、
これだけでそう簡単な乗り物でないことが想像つく。
おまけに半端ではない力仕事をこなし、それだけに危険でもあるウインチのレバーがあって、
合計4本のコントロールをこなすには、それなりの場数を要する。
そしてジープ唯一の色気がこのメーターの灯りである。
これだけはそこらのネオンにも勝る美しさと合理性がある。
私はこの照明を含むメーター回りの意匠は、
あらゆる自動車や戦闘機などの、どんなものよりも勝ると信じている。
見知らぬ旅先の寂しい夕暮れのなかで、ジープ唯一の、この室内ランプを灯したとき、そのぬくもりは、
最小限のものだからこそ、そこから得られる、ささやかな、しみじみとした幸福感に浸れる時である。
執筆者: kazama
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