JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
窪平で夕食のあと 子供のころ西部といわれた祖母の郷 小田野へむかった
激減しつつある葵の花を求めながらの道すがら
この花のたたずまいは 今の世に時代をものがたり
この花の周囲にむかしを漂わせる
夕暮れせまるなか 小田城址のある小田野山が藍色の姿を見せる
小田野城は甲斐源氏の安田義定が築いたとされ、800回忌!!が行われた
その後武田氏が隆盛し跡部氏との抗争の末、跡部氏は小田野山の麓で自害した
山梨も武田一色ではなく、小田野には士族の末裔の屋敷の配置などに風格がある
この火の見櫓の手前には道祖神があり、その前を通って祖母の家へいった
お祭りの時など ここに出店がならび、神輿が気勢を上げた残像が脳裏にある
ここを祖母がまだ子供の父の手を引いて生家へむかったのだろう
生家にとって父は孫にあたり どれだけの寵愛を受けたろうか
その時間のスパン、繰り返す世代交代を想うと痺れるような気持ちになる
それは大正時代のことである。ここの夕暮れに、確かにあったその日を想った
小田野をあとに坂を下る この郷には祖母と父の想いが漂っている
父が最晩年になってもう一度、小田野に行きたいと,生家を訪れたことがあった。
生家は孫の世代になっていて、お嫁さんしかいなかった。
どちらさまでしょう、というお嫁さんに、父は自己紹介し、親戚の筋を説明した
早々に失礼した帰り、川の対岸の馬場という見通しのいい高台に車を止めた
父は石に腰かけ、そこからもう来ることはない母の実家を眺めた
その後ろ姿には 第二のふるさと小田野への、今生の別れを感じた
子供のころからずっと、ここに咲く葵
( F )
執筆者: kazama
This post was displayed 848 times.