2007年09月25日
『Vista』の企業導入、依然として進まず

「多くの企業は依然としてWindows Vistaの導入に消極的」というニュースをJapan.internet.comが掲載している。

7月にIT関連支出の意思決定に関わる専門職1600人を対象として行われ た調査によれば、回答者の62%が調査時点でVistaの導入計画はないと答えた。この数字は4月の調査時からは1ポイント減ったものの、1月の調査における50%を12%も上回っている。しかも、Vistaの導入計画を 正式に決定した企業は3%に過ぎず、Vistaの導入をすでに完了した と答えた企業に至っては、全体のわずか1%だった

という。

同記事の末尾で待たれているというSP1はといえば、24日にようやくβ版が公開されたところ。

企業のほうはといえば、目先のニーズについてはXPを使い続けたいようで、ZDnetが伝えるところによると

根強い需要のWindows XP ─ PCメーカーら、Vistaのダウングレードオプションを提供」するものの「コンピュータ製造業者が今後いつまでWindows XPをプレインストールしたマシンを販売できるかという問題がある。Microsoftは大手コンピュータ製造業者に対して、XP搭載システムの販売を2008年1月31日に終了するように要求しているが、一部の製造業者はその後もXP搭載マシンを販売したい考え

だそうだ。

どうせ、そうこうしているうちに時は過ぎて、やがてXPのサポートが切れる2014年4月が必ずやってくる。2014年になってもまだ、パソコンが今のようなモノのままかなんて、誰にも分からんことではあるが、2014年というのは、コンピュータが人類の知性を超えるような大きな変化が起き始める年として一部で予言されている年のうち、最も早めの年でもある。2050年くらいまでの間には、XPでやれるくらいのことは、一足飛びに人間の脳味噌に埋め込み可能になりだしているかも知れないというほどの大きな変化が予言されているし、そんな大胆な話がある一方で、そうした発展を望まず「もう十分だ」とする意見もある。

今のXPレベルで「もう十分だ」とは、正直言いたくない。だが、その次にあるVistaは、XPで担っている業務をすげ替えるにはあまりにも突飛だ。XPの基本的な部分はそのままに処理能力や安定性だけが飛躍的に向上してくれれば良いものを、業務用に作り込んだ環境を作り直さねばならない割に、その御利益としての革新的なほどの生産性の向上が見込めないとあれば、ユーザーがXPに留まるのも無理はない。

そもそも、誰もが使う道具の変化に追いつけるわけではない。むしろ、馴染んでしまって安定稼働している場合、よほどかけ離れた優位性がない限り、新しい環境への順応という努力を払ってまで、その変化へ足を踏み出そうとはしづらいものだ。

しかも、そのXPへのダウングレードが起きている今というタイミングは、企業がIT投資を惜しんでいる時ではなく、景気の好転、企業を取り巻く環境の変化をうけて、基幹システムの刷新に取り組む機運が高り、中堅・中小企業がERPパッケージを導入するケースが増えているとすらと言われている時なのだ。

今のところマイクロソフトが失敗しているのは、新しいOSヘ移行して貰うに足る動機となるであろう、ユーザーによって作り込まれたものを移行してでもというほどの画期的な機能や安定性がVistaにあるという評価を広く得ることができていないことと、インターネットが普及するタイミングで自社ユーザーの囲い込みを露骨にしたがために、却ってユーザー側が束縛からの離脱という大前提でこれからを考える、その方向性を促してしまったことではないだろうか。

ユーザーは、端末に何を持ってこようと、自分のやろうとしていることが円滑迅速に遂行できることを望んでいるし、大事な情報がなくならず確実に存在し続けることを望んでいる筈。誰も、Vistaの、新しいかのように見えるインターフェースなど望んではいないのだ。

by DIGIBEAR