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過去の投稿

2021年11月 の投稿一覧です。

2021年11月17日  | カテゴリー: 登山 | 投稿者: kazama

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 広河原へのバスより早川を眺める

 かってウェストンが辿ったという五葉尾根杣道は、その面影もなかった。
絶えて久しい深沢下降点と言われた岳人たちの冬山ルートも、その痕跡は見つからなかった。深沢ルートは野呂川林道が出来てから吊尾根への新道と言われたもので、山仕事の古道を経ての登山というに値するのは、夜叉神を降りてゆく鮎差古道から荒川小屋を経て北沢或いは吊尾根を北岳へ至る、それは「北に遠ざかりて」という北岳の奥深さにふさわしい。

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2021年11月02日  | カテゴリー: 登山 | 投稿者: kazama

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(   野呂川林道開削記念碑   )

   五月末のある日、私は野呂川林道(南アルプススーパー林道)で写真を撮っていた。

三脚を立てた場所は、この林道のなかでも際立って険しく、観音峡と呼ばれる高度感のある所である。V字型に深く切れ込んだ谷の対岸に間の岳が三千メートル峰の貫禄で残雪豊かに聳えたっていた。

私はトンネルの出口で、4X5のカメラを構えていた。大判のカメラは1カットが手間がかかる。私はカブリ(黒い布のこと)の中で逆さまに映るピントグラスを覗いていた。ふと耳元でささやく様な声がする。誰か話し掛けたのかとカブリから出ると人影はない。左のトンネルから風が吹いてくる、声はその中から断続的に聞こえて来る。その調子は歌のようだ、風のいたずらか?と聞いて見てもやはり人の声に聞こえる。それは木曽節や炭坑節のような労働歌の様である。誰かがこの長いトンネルを歌いながら歩いてくるのだろうか、しかし声は近ずいて来る気配はなく、時には大勢がドッと笑ったり、かと思えば再び耳元で囁きかけるように聞こえたりするのだ。   私はゾッとして三脚ごとカメラを担ぎ、トンネルから離れた。

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