天空見張人

伊勢原と 　 書く指先の 　 なつかしさ
かってのお隣さんへ年賀状を書く…
これがあの家へ届くのかと　 しびれるような想いにひたる
お隣さんは自営業でフォークリフトがあった
住宅地ゆえ　その音に肩身が狭かったらしい
私にしてみれば、その旧いフォークリフトの
のどかな音は　我が家の風物詩みたいな心地よさがあった。
職人風のご主人にそれを言うと
『あの音をそう言ってくれるとは…』と絶句し下を向いた。
数年前にご主人は他界し
長年働いたフォークリフトは引退したらしい
私達が山梨へ引っ越すとき、ご主人は我が家の風呂から
まだ幼かった息子が数を数える声が聞こえてきたことを
懐かしむように話してくれた
フォークリフトの音と　　風呂からの 子供の声…
それは懐かしい あの時代の音
お隣さんどうしの 日常という価値
　あの時代があってよかった

この写真は私にとって大切なもの
山梨へ引越しの前夜10月30日の
これが25年のこの家の最後の灯り