JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
県道を外れ、九頭竜左岸の古道を西へ向かう
折りしも紅葉のおわりの山に 落日の残照
九頭竜の山と その水底に秘めた過去
暮れる山路にあった ふるさとの碑
昭和四十年水没 建設協力者は立ち退かれた方々だろうか
落葉のなかの ふるさとの跡を去る
残りたる 紅葉は照りて
長かりき 今日の山路を越えてきぬ
水没した村への 峠に着く
峠を越える人を その歴史を見守ってきた道祖神
降りてゆくと 記憶のある流れがあった
能郷白山の帰路に 遡ってきたあの日 めくるめく5月の午前
あの希望に満ちた 光まばゆい午前が この凋落 秋の夕暮れ
この真逆な表情が 四季のあるこの国の懐深さ
大野から鯖江で泊。翌朝の越前の海
午房平への断崖から 波間に漁船
敦賀から小浜 高浜 舞鶴から明石へ
自家用タクシーで明石大橋を淡路島へ渡る
海の現場 こういうのは撮りたくなる
淡路の高殿 洲本城へのぼる 80年近い昔の日に
祖母と父と幼い兄が 山梨から淡路島の親戚を訪ねた
山梨から夜行列車の長い道のり 停車駅での夜のしじま
兄の僅かな記憶の中で 父が早朝に登城したらしいこと
父は戦時中のある日 この洲本の街と海を眺めたろうか
その後親戚は大阪に引越し、空襲で音信が絶えて今に至る
淡路島と縁戚の証しは 幼い兄の僅かな残像のみになった
遥かに霞む四国 石槌山 剣山に登った秋の日を想う
淡路島のくらし だれかのふるさと
暮れてゆく 海を眺めるくらし
淡路島を去る 淡路大橋が島を変えた
明石から宝塚で泊り 翌日は京都北部を目指す
山中でも雅な植生は 意図されたもの故なのか
山椒大夫の舞台になった 由良川の源流
山岡大夫の屋敷? 地元の人に風景を褒めると、どこが?
と怪訝な態度 どこも日本の田舎はこうでしょう、と言う
この風景の洗練が 生来のこととて、何も感じないらしい
由良川を海へむかう 漁港の古い街
京都に来たら必ず来るところ 舞鶴漁港の変わらぬ佇まい
十年ほど前の雪の漁港 この重厚な風景が変わらない
寺院や古跡だけでなく 暮らしの風景も変わらない
それも京都故なのか 京都は日本海を向いている
舞鶴をあとに 若狭に向かう
濡れた路面に 灯りが滲む これが北陸の風景
高浜で泊まった朝 若狭富士と例えられる 青葉山の美しい姿
美形の山の筆頭のこの山に、はるばる神奈川から登った日
意外に険峻な二つのピークを歩いた 満ち足りたあの日
高浜から小浜を経て敦賀 関東から日本海への玄関
右へ越前 左は若狭から舞鶴、丹後 さらに山陰へ
敦賀港へ行くこの路地へ 何故か必ず寄る
十年前の路地 自転車は赤に変わり、そして今は無くなった
敦賀を後に 関ケ原への道中 伊吹山の麓のプラント廃墟
かっての巨神の如き雄姿 現代社会を支える悲壮感を度々撮った
帰宅したらこの有様(笑)淡路島にあった阪神大地震の惨状保存
今や雪だろう九頭竜奥の平家岳 その神秘の夜に浸りたい
(F)
執筆者: kazama
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