JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
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…3000mの稜線に雪がきて.今年の無雪期登山シーズンが終った。
8月は天候に恵まれず.9月がピークになり.例年にない集中になった。
槍が岳の狭い頂上は3時間の順番待ちの状況だったという。 …どうやら空前の登山ブームらしい。
登山口のレストランにカラフルな新品のザックがずらりと並び.サンプルの展示品かと思ったら食事中の登山者たちのものだった。なかでも新規参入の若い人が目立つ。
20年ぐらい前までは中高年登山者が老齢化したら山は終わるのではないかという危惧があった。しかしこれだけ若い人が参入すれば当面は安泰ではないだろうか.高齢化社会の中では貴重な現象でもある。
そのきっかけは山ガールと言われた方々ではなかったかと思う。それまでの灰色の世界に彩りが加わり山が活気づいた。 …若い女性を取り込むことができれば他の客層はついてくる…事業などのそのセオリィは登山界にもあてはまるようだ。
…自然の成り行きであるが気になるのは槍とか剣岳.穂高のような超ブランドに人気が集中し.オーバーユースが見られることだ。来シーズンが天候に恵まれたらその山域の山小屋や登山口の駐車場など対応しきれないのではないかと思う。それに前剣の登りや北穂南稜.槍などの集中箇所などでの人口落石も気になる。
…そんな中でモンベルから岳人のロゴマーク入りの封筒とマグカップが送られてきた。
月刊誌「岳人」の出版事業をモンベルが引き継ぐということだった。
岳人と言えば私の生まれる以前からの月刊誌だった.「家の光」とか「冒険王」が今でもあるようなものだ。
…何故ここまで存続できたのか…そこには「山は旧くならない」ということがあるのではないか。私が山に行く理由の一つが長い時間のスパンに触れられることがある。
もう一誌の「山と渓谷」と共に若い頃から購読してきたが.時々保存版にしてあるのは岳人の方だ。 「中の下」を自認する私にとって「中の上」あたりを想定した誌面作り.あと渋めの装丁による本としての質感などによるものだ。
世相からして出版業界の環境は厳しく.伝統ある岳人の窮状をモンベルが引き受けることになったのは嬉しいことだ。
いろんな趣味があるが.その奥の院に紙の出版物が存在することは燈火のように思う。 まして山は奥が深く.そして危険でもある。たぶん登山より危険なモータースポーツなどと比べても.ひとたび事故や遭難といった局面では救出の困難さは比較にならない。やはり山という舞台を単なる遊びのステージとすることは、社会人として無責任な態度に思う。なにより自然に対して謙虚でありたい。
岳人の10月号は剣岳の特集、11月は単独行の加藤文太郎というもので、その装丁と共にたれ流しの月刊誌を越えて保存版とするに値する質感を感ずる。
これだけ若い人が参入してくれた登山界が魅力と奥行きのある世界になるかどうか、、、こういう本を手にしてまだ見ぬ山行に夢を馳せ、自分の登山スタイルを作り上げて行く人が増えてほしいものです。
執筆者: kazama
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