JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
とうとう今年の最終日がやってきたという思いでバスに乗る。
芦安の駐車場に登山者のランクルの40が停めてあって驚いた
40を見ると私が10年も死蔵してあるFJ40を想い胸苦しくなる。
10月は散々な天候だったので、やっと晴れた11月の三連休がラストチャンス。その最終日なのでかなりの下山者がバスに乗った。
タクシー乗り場のテントが無くなり、常駐していた六台の北沢峠便のバスが里に下りて行くのを見送る。
山小屋のスタッフが三々五々家に帰ってゆく。
奈良田行きと甲府行の重いバス停の標識を撤去し屋内に格納する
みるみるガランとしてゆくバスターミナルに動くものは
カサコソと落ち葉だけ。
なぜか弱っていて、朝に息絶えていた小鳥を林の中に埋葬する。
この広河原に生きた僅かな時。そのことが晩秋のわびしさを募らせる。
いつもは入れておく無線の電源を切り、灯りを消して施錠する、来年の6月までの沈黙の空間を想像し、しびれるような心持になる。
最終便は、ほぼ満席、このバスが今年の最終の交通機関になる。
登山センターのスタッフが施錠してバスに乗り込むのを待ち、北岳に向かって長いホーンを鳴らし、通い詰めた広河原を後にする。
車窓からは暮れなずむ山稜と野呂川の谷、私個人としては池山吊尾根の末端からの登路を発見したかったが、来年の課題になった。
バス停に安全運航のお礼として清酒と塩を捧げながら山を降りる。
バスは暖房が効いて暖かい
隣の席には小学生ぐらいの姉妹が寄り添って寝ている。
夜叉神発車は5時21分
すっかり暗くなり甲府盆地の夜景が見えてきて、世界が切り替わる。
芦安駐車場が近くなり小学生のお母さんが姉妹を起こしに掛かるが中々起きない。
お姉ちゃんをやっと起こし、妹を起こしなさいというと寝ぼけ眼ながらうなずいた。何気ない家族のぬくもりが沁みてくる
芦安に着き、降りてゆく姉妹にまた来てね、と声をかけると仙丈岳に登ったという。
この日のことはたぶん一生覚えているだろう
それは人生の糧であり家族の絆となる
芦安発は5時40分。バス停に安全祈願をしながら来たので遅れた。
発車するバスから姉妹の家族を目で追うと驚いたことにランクル40に向かっていった。
なんとスパルタンな元祖四駆というべき40で、あの家族はやってきたのだ。その質実剛健な車でやってきたあの家族のぬくもり
その完璧な構図は今年の大賞もんと言える(笑)
( ランクルBJ42。3400ccのディーゼルだが4200ccのFJ40Vをもう10年に亘り修理中 )
会話しなかったことがちょっと悔やまれた。あの車であれば、今は唯一と言える四駆誌の私の記事を知っているかもしれない。。
もう二度と会うことはないだろうその出会いが胸にのこった。そしてこのバスが、そんな幸せを運んでいることを実感できるひとときだった。
しかしその裏側にどうしても見え隠れする、今年も発見されなかった行方不明の方のこと。。今年ももうすぐ根雪になるというこの時期に、山に取り残された子を想う親がいる。。
そのことを想うと遭難は罪なことだと想う。
暮れる晩秋の山からネオンの甲府に降りてくると大都会に思える。
僅か二時間ほどの別世界を感じ、そして娑婆はいいなあと思える。
バスからそれぞれの日常へ帰ってゆくのを見送るこの時が好きである
執筆者: kazama
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