JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
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Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
今では考えられない話だが、子供たちがホタル狩りをし、その蛍を買い取る業者がいた。
買われた蛍は都会のキャバレーなどのムード演出に一役買うと聞いた。
私は毎晩のように小遣い稼ぎのホタル獲りに出かけた。当時子供は多く、近所のみんなも同業者だったから正にホタルの乱獲だった。それぐらい多くのホタルがいたことになる。
明かりを持たないから川に落ちたり、当時は随所にあった肥だめに落ちたりした友達もいた。記憶では一晩に30匹ぐらい獲れた。
ホタル買いのおじさんは外灯のある電柱の下で待っている、時折おじさんの居場所は移動するからその情報は大切なことだった。薄暗い外灯の下に座っているおじさんにホタルかごを差し出すと、中の蛍を容器に移し、なぜか「ひい、ふう、みい、よう」 とホタルを数える。その低い声を聞いていると催眠術にかかったように心地好く、眠くなったものだった。一匹一円で買うから一晩30円ほどの「荒稼ぎ」になる。
私はその売上を貯め、当時すでにあった「航空ファン」を買いに街の本屋にいった。子供むけの「冒険王」とかいう付録満載の分厚い雑誌もあったが興味はなかった。 大人のマニア向けの航空雑誌を自分で稼いだ金で買うことには何とも言えない喜びを感じた。ちょうどその号の表紙は私の好きなRFー101ブードウーが洋上を飛ぶものだった。まだF4ファントムもない時代、この飛行機の端正なラインと犬の鼻のようなノーズが好きだった。おまけにいちばん好きだった三沢基地のチェックの塗装のものだった。 この号はどこかで失われたが、私の記念すべき航空書籍一号の表紙の構図は今でもありありと浮かんでくる。
ホタルの成虫の寿命は2~3週間といわれている。その短い時間を清流で過ごせればよいものを、私たち子供に捕らえられた不運なホタルは都会に送られ、盛り場のタバコの煙のなかで身勝手な風物詩を受け持つことになる。当時はまだ野蛮な時代でもあった。都会に送られていくホタルをかわいそうに思う気持ちもいくらかあったが、航空ファンやプラモデルの魅力にはかなわなかった。
RFー101ブードウーのスマートな姿を見ると、田んぼにいっぱい飛んでいたホタルの光を思いだす。
2014/6/18
執筆者: kazama
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