JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
送電鉄塔への巡視路は以前から登山道のない山域や沢登りの際など多大な世話になった。
それは私にとって「第三の路」とでも言うべき重要なものだった。
今回も207号鉄塔への路をたどり偶然にも未踏の山稜を歩くことができた。
米沢山の急峻な山容
いつも20号線の笹子トンネルを通るときその上の急峻な山稜が気になっていた。
笹子雁が腹摺山から米沢山への稜線であることは解っていたが、こちら側からの確たる登山道はない。
林道らしきものが米沢川の右岸に見えるのが気になっていたが、思いきってバイクで偵察にいった。
1キロぐらいで行き止まりになったが208号鉄塔への標識があり非常に急だが登路らしい。
午後3時を過ぎてはいたが行けるところまで行ってみることにした。
利用されていない尾根だと思っていたがこんな石碑があった。なんの祈願なのか。。まったく昔の人の山への深い繋がりには驚くばかり
細く急な尾根を登ること一時間で威風堂々たる208号鉄塔に着いた。この鉄塔のスケールは最大級なもので、よく道のない山中に建てたものだと思う。リニア実験線のために富山や新潟から別系統の大電圧で群馬西幹線というらしい。
「鉄塔武蔵野線」で覚えた結界という言葉がしっくりくる。あの物語から趣味ということのなんたるかを小学生の純粋さとオリジナリティから教わった
背後の雁が腹摺山まで30分ぐらいで登れそうだが鉄塔から上の稜線に道がある保証はない。時間も4時を過ぎているし急な下降も気になるから引き返すことにした。
対岸の米沢山への尾根には207号鉄塔が見え、そこまでの路はあるはずだ。
一旦は引き返し、再度この尾根を雁が腹摺山まで登り、尾根道を米沢山まで行き、そこから207鉄塔まで下降できたらすばらしい。
想像もしなかった大好きな、この山域の未踏の尾根を二本もトレースできる。それも北面の険しい、登路のないと思っていた鋭い尾根筋である。
急な10m程をワイヤーで林道に降り立ち、再度ここをやる気になってバイクに乗った。
(4/21 米沢山北西稜を登る)
その明後日、どれだけ時間が掛かるか分からないから早く家を立った。
作戦を吟味したら既知の208鉄塔から下部は下りにしたほうがリスクがない。反対に全く未知の米沢山北西稜を行程の後半に下降するのはリスクが大きい。登りは集束するし敗退するにしろ始末がよく、反対に下りは拡散し、かつ敗退が登りになる。
という判断で米沢山の207鉄塔を目指し登り始めた。
腹摺山北稜より痩せておらず踏みあとも明確ではないが何処でも登れる。
傾斜が緩んだあたりで米沢山から雁が腹摺山への稜線が見えてきた
一時間強でなんなく207鉄塔に着いた。背後には赤石荒川や白根などが白く見え、対岸の腹摺山北稜には一昨日登った208鉄塔が見える。上手くいけば午後にはそこを下降することになる。
10分ほど休み、いよいよ207鉄塔上部の核心部にとりかかる。
予想通り次第に痩せて傾斜も増し悪相になる。若い時なら臆せず行動できたが今は僅かな転落の可能性も極端に怖くなり、それに未知なルートという心理が加わって背中がざわつき尻がむずむずする。やはりこを降りるなんて判断をしなくてよかった。
米沢山への傾斜感にいくらか萎える
隣のトクモリ北稜(仮称)を見る ほんとはここを登りたかった
この深いギャップは知っていたがとても無理なのが分かった(笑)
臆病に、極力木の根などをホールドしながら登るうちに空が広くなり米沢山に着いた
東には私の聖地 お坊山の美しい二つのピーク ここで泊まりたいのは切なる想い
懐かしい尾根道を雁が腹摺山に向かうが急峻なアップダウンがありクサリの箇所もある。
秋に笹子峠からお坊山まで往復した時はたっぷり一日かかり、短い日にヘッドランプを点けた記憶がある
細かいアップダウンのある美しい尾根をたどる。
西穂奥穂間の岩稜などより遥かに惹かれ ここにいることの幸せを感ずる
越えてきた米沢山を振り返る
残る未踏な箇所は雁が腹摺山から208鉄塔までの下りのみだが、はたして尾根は209鉄塔までの径路になっており難なく下降できた。鉄塔から下は一昨日の径路だから問題はない
208鉄塔から辿った尾根をふりかえる 安全圏から行程を顧みるのは格別なものがある
樹脂製の階段の杭を踏むとかなりの確率で浮いている。それを踏み込みながら下ればいくらか維持の助けになる。利用する方は心がけたらいいと思う
最期の尾根が急に谷に落ち込む手前を10m程急降下して北尾根のトレースが終わった。
思えば気まぐれの行動がきっかけの,かろうじて冬木立の見通しが効く大満足の山歩きだった。感じたのは見てくれは大した傾斜でなくても行ってみればかなりの怖さがある。以前なら立木のある尾根などどこでも登れるぐらいに思っていたがとんでもない。これも足腰の衰えから来る不安感であり、今後の行動の可能性を見直さねばならない。
下界は新緑のなか 振り返ればすでに懐かしい207鉄塔から米沢山
まだ冬枯れの稜線からピークを経て208鉄塔の全貌
執筆者: kazama
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