JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
始まりは重く 終わりはさびしい
この身勝手な感情をもう六年も繰り返してきた。
この時期はふと、家にいても今朝の始発は何人乗ったろうかとか、
夕方になると、山を降りる最終バスが暮れる野呂川を走る様子や、
夜叉神トンネルを抜けて夜景が見える頃だろうかと、つい想像する。
最盛期には座りきれない何列もの登山者の残像
始発バス7~8台のピークを想うシーズンのおわり
一台だけで登ってゆく バスの音が遠ざかる
そして次に、もうどの時刻にも、バス一台も走っていないことに気付く
その空虚感というか、山の静寂を想うとたまらない。
6月から毎日欠かさずの定期便が山から去ることは
この山域の血流が止まったような感覚があるが、
しかし思えばこれこそが真の山の姿である。
バットレスは雪煙を上げ 山は格段に難しくなる
何度も通った林道の ここが一番の絶景
山を降りて,広河原の山岳インフォーメーションとバス停留所
ここが娑婆のはじまり、それぞれの日常へかえる安堵感
低くなった秋の日に バス停が長く影を引く
そして次のシーズンが始まるのは来年の新緑が終わった頃
6月下旬であり、この空間の長い沈黙を想う。
その間に私もひとつ齢を取ることは確実であり、
実はそのことの重みがこの寂しさに転嫁しているのではないか。
ものごとには終わりがある。どんなに華々しく始まったことも
いつしか終わりが来る。
そのことの究極が自らの終わりであることは
暗黙のうちに結びついているのではないだろうか。
時間の去ってゆくことへの哀惜の念は、その事象への想いのようで、
その背後に自己の時間の消費という意識が潜んでいるように思う。
11月の運行最終日は非番だったので、台風による被害で通行止めとなった北沢峠への状況を見に行った。
最初の崩壊箇所の三好沢までは2,4㌔の緩い登り。
歩く人さえ絶えた林道に、折からの黄葉と深い青空が哀しい。
この美しさも、反面の牙をむく暴力性も相反するものではなく、
主体のない、とめどない無為をなす。
現場は巨大な岩石が崩落し、道は跡形もない箇所が200m近い
崩落の全容を把握すべく北沢峠側に行くには野呂川まで降りて行く
迂回歩道を造るには総て人力
これは懐かしいガジという道具
かなりな傾斜
河床近くまで降り 三好沢を渡る架橋
崩壊の主力は5立方mぐらいの巨岩が橋を直撃していた
百トンなんてもんじゃないだろうが見当もつかない。
下が見えていても橋の骨格は破壊していない。
70~80㎝ぐらいのI字鋼が重さに耐えていた。
土木の安全マージンは想定の三倍は取っているという。
この量感 この原始の巨大さ
崩落現場をあとにする。カラマツの影が路面にうつくしい
土木工事の拠点 美しい佇まいに惹かれる
( 池山吊尾根への 深沢下降点を探る )
深沢に懸かる橋のたもとにある山の神
下部には登拝の石段の遺構を確認
森林軌道あとのトンネルを探る
時のよどみ。。レイルも残るが、落盤地点までは怖い
下降点付近の概要 案外な難路が予想される
下部になるに従い傾斜が強くなる南ア特有の谷筋
山じまいに未練たらしく、池山吊尾根への太古のルート
深沢下降点と呼ばれた痕跡が残っているか降りてみた。
ここが降り口? まさか
更に登山者カード入れ? まさか深沢下降点にどんだけの人が。。
そして昭和30~40年代に登山者カードなんてあったっけ。。
旧いバス停の標識? 広河原まで8km。。
岳人がここでバスを降りた?まさか。時代考証がわからない。。
あまりに証言が少ない南のむかし
辺りには無数の空き18L缶。一升瓶。
何かを据えたような痕跡
林道建設の ここが重要な拠点だったことが覗われる
青いサンダル。。ここにある程度の暮らしと
そして憩いがあった。。
ゴミ焼却場所? 二つあった
しかしそこから下、深沢を下降する踏み跡らしきものは皆目わからない。
しかも折あしく鹿の捕獲用の罠の目印がある。
どんな構造か分からないからやたらに歩けない。
恐らく鹿も歩きやすい所を選ぶだろう、
深南部などは逆に鹿道を借りて人間が歩く。鹿にとって人が来なくなった廃道は絶好の生活道だろうからそこに罠をかける。
罠のあと?作動後かどうか不明 スプリング仕掛け?
ここにも。。歩きやすそうな場所にそれはある(笑)
いまいち納得のいかない、あるき沢ルート。
下のあるき沢橋から。。三時間半の急登。
でもここを登る同志たちに限りない共感(笑)
こうして絶望感とともに私のクラシックルートは探索は終わった。
太古の吊尾根の野呂川からの四時間近くの急登は、
いまも樹林のなかに痕跡があるのだろうか、
それを探る術もないが、原始の静寂境に戻ればいい。
あとわずかの秋の陽を歩く
今年の紅葉は遅れた。最盛期の山じまい
威風堂々 眠れる獅子 滝ノ沢頭山とも今日限り
ここを通るたび、登頂した友人を想う。得な奴だ(笑)
暮れてゆく早川 すべては海をめざす
広河原に詰めていた警察車両が、今年の任務を終え 降りてゆく
甲斐駒 仙丈への登山を担う 南アルプス市営バス
豪雨による崩落で早めの運行終了となった
来シーズン復旧を切望。よろしくお願いします
芦安駐車場発17時40分甲府行が 今年度の最終便
バスよありがとう そして関係者に感謝
執筆者: kazama
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