JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
このところ山の遭難が相次ぎ新聞に載らない日はないぐらいだ。
ヘリが毎日のように山にむかって行くので気になってしょうがない。
しかし幸いなことは大事故ではなく普通の登山道での転倒ぐらいのが多い。
骨折とか顔を打ったとか、中には山小屋の階段での転落もあった。
それも遭難という範疇だろうかと思うが、何せ山中だから救助は必要になる。
そして殆どが60代の登山者であることが同世代として苦い思いがする。
天候とか落石とかの自然現象、あるいは共感まで感じてしまう難ルートでの敗北。そんなのが遭難という概念がある。
しかし頻発しているのはごく普通の条件での一般ルートの登山道でのことで、これは遭難というより登山者の高齢化問題ではないかとも思う。
事故にあった方の登山経験とかは不明だが、つい定年になって山を始めたような初心者と思っていたが実態はどうだろう。
昨年のいまごろ、私は永年登山をやってきた締めくくりみたいな気持ちで、なんとか北岳バットレス四尾根を登れないだろうかと思っていた。
もちろん誰かに頼んでのガイド登山という形である。クライミングの道具は一揃いはあって沢登りは結構やった。
しかし乾いた長いルートは登ったことはなく憧れていただけだった。これはサークルに属さず、殆どが単独登山だったこともある。横から見ると割と傾斜が緩く見えて天候さえよければ登れそうな気にはなっていたが、数年前Dガリー崩落により難度が上がったというのが気になった。
まあ来年までに体力トレーニングしてその気になったら、ぐらいに思っていた。
その秋の11月に早川尾根のアサヨ峰でビバークしたくなりザックが20キロぐらいなったと思ったら17キロしかなかった。
それを重いと感ずる自分。5泊ぐらいの時は25kgぐらい担いでいたはずである。
その夜は天候急変して雪になりアサヨまで行けずに栗沢山で暴風からテントを守るのがやっとの夜になった。
ほうほうの体で下山の路で、何ということもない石につまずいて派手に転んだ。
その転び方は今までにないものだった、スリップではなく、ごく低い石につまずいた。。。
眠れなかった疲労と窮地を脱した安堵感で気が緩み、上げているつもりの脚が上がってないのだ。
冬山で稜線ではミスしない12本爪のアイゼンを、何のことはない低地で引っ掛けるのと同じ。。
なんのことはない、私もいま頻発している高齢者の事故の構造とまったく同じである。
そのとき思ったのは、このていたらくな俺がバットレスなんてよく言うわ。。。まったく目が覚めた思いだった。
バットレスとなれば行動時間は10時間を超えるだろう。ザイルを付けた核心部ばかりイメージするがむしろ落石地帯のトラバースなどの方が危険だったりするだろうことは、沢登りでも滝の登攀より高巻きの微妙なトラバースの方が危険だったことで想像がつく。。
かくしてバットレスの夢はあっけなく潰えたが、それでいいと思うし全く未練はない。
老いはだれにも均等に訪れる、若い時は根性で体を引っ張っていく気がしたがその方法論はもう通用しないし無理がある、山は見栄をはるのが一番危険だと思う。思えば沢登りで見よう見真似のリードをしたり今になって冷汗が出る。
これからは体と折り合いをつけながら、心から行きたいところ、ほんとは好きなメルヘンなところに行きたい(笑)
執筆者: kazama
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