JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
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この山の黄蓮谷で遭難事故が発生したというニュースが入った。
甲斐駒の黄蓮谷には地元のお婆さんから聞いた印象的な話があった。
私がまだ若い頃、この山の写真を橋のたもとで撮っていた。
そこを通りかかったお婆さんが、一昨年の秋のことだと、甲斐駒を見ながら話した。
この山に黄連の花が咲くという谷があり、そこで学生さんが遭難した。何度も遺体捜索をしたがその年は発見できず冬を迎えてしまった。
「翌年の田植えの頃になって、この橋の下に学生さんがいた、きっと家に帰りたかったんだろうねえ…」
そう言われたとき、え、降りてきたんですか、と言いそうになり口をつぐんだ。遺体発見のとき、よくそういう錯覚をおこすことがある。雪解けでこの橋の所まで流されて来たのだろう。
それいらい、黄蓮谷という響きは美しくも哀しいものになった。
いつかは黄蓮谷を登りたい…そう思ったが登攀要素の強いバリエーションルートである。ルート図をみて滝の難易度を予想したが、単独行の私にはリスクが高く、憧れたままでこの歳になってしまった。
そんな山のルートが他にもいっぱいある。 人生とは諦めることなり…こと山に関していえばそんな思いがする。
昨日の遭難事故は雪崩によるもので、女性が重傷を負ったが昨夜はビバーク、今朝ヘリコプターで救出されてよかった。この極寒のなか、氷雪の黄蓮谷でのビバークがどれだけの厳しさだったろうか…
生還できたらできたで、その苦難を想像してしまう。
執筆者: kazama
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