JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
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私は積雪期のピッケルは別としてストックの類を持つ習慣がない。
たまに持ってみると岩場では邪魔になるし、あまりメリットを感じない。
しかし骨折し、ストック頼りに10時間かけて生還した記事をみて考えを改めた。
もしストックがなければ生還できなかったろう。いつも単独行の私には響いた手記だった。
それからは使わないにしろ持つことを心掛けた。
椹島から入山し、二軒小屋から蝙蝠岳を経て仙塩尾根をたどりテント四泊、ひと気のない数日から一気に夏山最盛期の仙丈岳の頂上にたどり着いた。 あとは北沢峠に下るだけだ。
ちょうどツアー登山の一行が来て全員がストックを持っていた。
そこではたと,私のストックがないことに気がついた。 野呂川越えのあと、伊那荒倉岳でザックを下ろした時に置き忘れてきたに違いなかった。使わない物は忘れやすい。気も晴れ晴れと下山という段階で心は曇った。
ひっそりとした仙塩尾根の岩影に残るパープルのストックを思った。
山霧に濡れ、どれだけの月日をあそこで送ることになるのか、、、これが街中ならそうは思わない。しかし寂しい山中に置き去りにするのは忍びない。ストックという機能がではなく、山に置き去りにするということである。
幸い予備日も食料も水もある、仙塩尾根を戻りテントでもう一泊し、野呂川越えから両俣経由で野呂川出合いまで歩くことにした。
そう決めた私は、午後のガスが湧き、再び静かになったハイマツの道を戻った。
これであのストックに申し訳がたつ、、、そんな気分だった。
執筆者: kazama
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