JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
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甲府駅発9時の登山バスは平日としては意外な乗客数だった。
詰めてもらって全員が座れ、立っているのは乗務員の私ひとり。すると外国人の若い男性が立ち上がり、私に席を譲ろうとする、乗務員なのでと身振りで謝礼し、発車した。
登山口まではバスで山道を2時間もかかり、降りたら標高差1700mの登山が待っている。
誰しも体力を温存したい状況だろうに席を譲ろうとする行為には驚いた。
私が女性だったり老人なら解るが荷物もないしそんなに弱々しく見えたとも思えない。まだ若い彼がこれまでどういう躾をされて来たのか、それとも社会の環境なのだろうか、、、その行為のルーツを考えた。
16:30の最終バスの時刻が迫った頃、若者が切符を買いにきた。
まだ息が弾んでいて、着替えてはいたがバスの席を譲ってくれた彼だった。日帰りで北岳に登頂してきたという。 バスが登山口についたのは11時ごろだった、5時間ちょっとで往復してきたというのは驚異的なスピードだ。そんな並外れた登山を控えてバスの席を譲ろうという気持ちはどこから来るのだろう。 道徳なのか哲学なのか、それとも自らに課した試練なのか、あるいは彼のダンディズムなのか、、、
バスは夕闇せまる18:20、甲府駅についた。どこまで帰るのか、異文化を匂わせた彼が人ごみに消えていった。
執筆者: kazama
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