JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.

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Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN

2022年07月12日 16時11分 | カテゴリー: 登山

忘れ得ぬ山 … 晴れた能郷白山にて …

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単身赴任先の静岡から、遠路北陸の能郷白山に向かった。
この頃は森林限界が低くメルヘン的な北陸の山に惹かれていた

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豊富な残雪と美しいブナの林を抜けると山頂が見える

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そこに空があり 白い雲がある 山は空に接するところ
手を伸ばせばそこが空のような 胸焦がす空への憧れ
けれど山頂に昇りつめれば 空はまた 遥かな高みに遠ざかる
山頂にはこんな空はなく ただ深遠の  その下に地上がある
そのさめざめとした  一種の虚しさのような心持。。
それを知っているから 今のこのしあわせを ぐずぐずとかみしめる

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能郷白山頂から奥美濃の山なみ 揖斐川の源流

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豊富な残雪の南面につながる前山の山稜

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そのブナに覆われた 魅力的な山容

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この尾根を歩いてみたい この世の至るところ青山在り(笑)

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草原状の山頂の一角にスペースを見つけ、早々とテントを張った
あまりの好適地に ご機嫌で写真を撮る

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草地に足を投げ出し 西洋人のように日光浴を気取る
青空の下、北陸のブナの山々が雲海に洗われていた

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およそ考えられる、これ以上のものはない幸せの構図…
この日は息子が大阪へ 新幹線で採用面接に向かう日だった。
活況だった雇用状況がリーマンショクで一転して悪化
関西にまで活動範囲を広げざるを得なくなった
親としても関東にいてほしいのは山々であるが。。
いちばん大切な時期に、息子の世代にやってきた社会の激動
この青空の、この雲の下を、息子はどんな想いで関西に向かうのか…
幸せな構図とは裏腹に、親の無力を噛みしめ黙念と過ごした。

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しだいに雲海の潮が満ちてくるような。。

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この林相と たおやかで深遠な山容。。

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寄せる雲 山霧に暮れてゆく山。。

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いつしか日は西に傾く

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広大な雲海の果ては日本海。。

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僅かな残光がテントを染めて 全ての輝きが去ってゆく
暮れる山に独り とり残される この孤立感こそ山のエキス

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2010/5/30 未来永劫やってこない 今日という日
確かにあった この日の時空は 西方浄土へと行くのか

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一夜を横たえたこの世の恩 この僅かな平地に 黙礼し去る

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帰路の九頭竜源流から郡上八幡へ 私には珍しくオープンにした
23万㌔走ったロードスターNAの、これが最良のドライブだった

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九頭竜湖への清冽な源流を渡る 5月末の めくるめく晴れた日
およそこれ以上鮮烈な春の日は、その後なかった気がする
前夜の能郷白山の静寂から一転し、この希望に満ちた陽光と空
この新緑の右へ上る尾根を見上げ、あそこへ行きたいと憧れる
行けばただの緑の樹間であることは分かっているのだけれど。。
空と接することへの価値観は 頂上直下の空の見え方と同じもので
それは山へ対する幼いころからの憧れの 原点なのだと思う
このことは この青い空への憧れに外ならず、遺伝子のものだ
このとき聴いたのか定かではないがピンクフロイドの
GREEN IS THE COLORという曲とこの光景が強く結びついている。
この写真が今も部屋にあって、この曲を聴くと、この日の幸せが蘇る。
音楽は理屈抜きで、その刷り込み現象のような強い作用に驚かされる
生きる意味だとかいうが、この空の下で生きられるだけでいいと思う。

下は昨年の晩秋の暮れなずむ頃 ここを通った折の情景
あの時の希望に満ち溢れた光と空が この凋落の秋
四季のある国土故に 生者必衰や諸行無常といった
私たち日本人の感性を生んだのだろう 心は自然に育まれる

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執筆者: kazama

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