JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
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Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
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2017年1月 の投稿一覧です。
山村の小学生、遼平は村の消防団に配備されたパトロールに魅了される。
ある冬の夜、隣家の失火による延焼に見舞われ、駆けつけたパトロールの健闘空しく遼平の家は全焼してしまう。総てを失った遼平の胸に残るものは、消失した生家の面影だった。
第二話 分水嶺
( 前上げ走行 )
峠へ通ずる坂道を登ってくるバイクがある。マフラーが破れているのか、50ccのスーパーカブにしては結構な音である。乗っている学生服の少年は、まだ免許証は持っていない。カブ号は見晴らしの良い広場に来るとUターンし、エンジンを切った。バイクに跨ったままで景色を眺めている無免許運転常習犯の少年は、高校受験を目前に控えた遼平だった。
そこからは村のむこうに町が見え、盆地をぐるりと取り囲む山々の後ろには雪煙を上げる富士山も見える。そして目前の村には新築された遼平の家が見えている。
あの火事から五年の歳月がながれていた。
パトロールの小屋は、だいぶ古ぼけてはきたが以前のままだった。
遼平はあれ以来、小屋の中を覗くことは少なくなっていた。パトロールの赤い色を見ると、あの夜の天を焦がす炎と、叫び声と、そしてパトロールの唸りがよみがえって来てイヤだった。
遼平の専らの興味の対象はバイクだった。それは兄の影響である。兄のベンリイ125の荷台には、小学生のころから随分乗せて貰った。パチンコに狂った兄は、町へ行く時には、どういう訳かいつも遼平を連れていった。遼平は退屈で仕方ないのだが、その後のラーメンと、時には映画館で洋画を見られるのが楽しみだった。
兄はたいがいがスッテンテンになり、荷台の座布団に遼平を乗せ、夜の家路を走る。北風をまともに受けながら走る兄の背中に隠れ、兄のジャンパーのポケットに手をいれて寒さに耐える。
「遼平、だいじょうぶか、」
兄は遼平を気ずかう。その優しさと背中の温もりを遼平は忘れない。
バイクに一人で乗ったのは父のスーパーカブが初めてだった。右手のグリップを回すだけで坂道をグングン登っていく驚異に遼平は虜になり、学校から帰ると毎日乗らずにはいられなくなった。無免許とはいえ、家から上の坂道には信号もなければ交番もない。ただ狐がいるぐらいの聖域だったから父親も、とやかくは言わなかった。
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大晦日も元日も なんの根拠もない
ただの同じ明け暮れ…
この世のすべての動物や夥しい植物
細菌類に至るまで、生物はみな、そう認識している…
たぶんそれが正しく、また楽になれる事実(笑)ではないか