JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
日生（ひなせ）フェリー記念日
山の仕事が終わると海に行きたくなる。
昨年は淡路島が良かったので、小豆島に行くことにした。
関東から関西へ行くとき、鈴鹿の山が関西への境目と感ずる
右が御在所岳 左が鎌が岳〈たぶん）１０年ほど前に登った
岡山から最短時間で渡れる日生から大部港へのフェリーは1320出航
しかし息子の電車が事故で遅れ小豆島へは最終の1620便になった。
慣れぬフェリーに早めに来1045でも乗れると言われたが
次の1320便も見送り最終便まで待つことになった。
乗船誘導のおじさんは(右端）関東から来て空いた時間を気の毒がって
景色の良い場所や食事処など諸々親切に教えてくれた。
聞けば５０年続いた日生フェリーが１１月一杯で終わるという。
乗降の減少傾向にコロナが追い打ちだった。
時間がたっぷり余ったので日生の港町を散策する
日生の街は背後に山が迫る魅力的な街 この山に登りたい
ヤンマーディーゼル日生出張所 民宿よしだ。。
この港町の日常を彷彿とする
日生湾の目前の鹿久居島へ日生大橋を渡り向かう
鹿久居島の最高点とその美しい姿 登路は皆無らしい。
小豆島大部港行1620最終便の表示
11月30で退役するという ひなせフェリー
搭乗時間変更で何度も来て、世話になった日生券売事務所
日が傾いたころ、世話になったおじさんに誘導され乗船する。
「世話になりました、お元気で」同年輩同士のお別れ。。
湘南ナンバーのサンバーが 1613 乗船完了した
出航し桟橋が、また半日近くを過ごした日生の街が遠のいていく
日生湾を見下ろした、おじさんに教わった展望台
すでに懐かしいあのとき
鹿久居島の最高峰が後ろになってゆく
長島と無人島らしき島影
東には無人と思わしき採石場らしき岩だらけの島
西の海の遥かな島の向こうの残照が印象的だった
暮れてゆく海、遠くに明かり灯りはじめる日生の街
山国生まれの私に、その生活感が切々と迫ってくる
島国の日本。その津々浦々で、こんな海の明け暮れが在るだろう
電車が遅れたことで結果的に、暮れる海の情感に浸れた。
暗くなる海を まだ見ぬ小豆島へ。。
フェリーのキャビンに明かりが灯る。。
大部港から３０分ほど 土庄（とのしょう）の宿は、
久々の息子と三人の夜だった
50年の歴史を あと僅かで閉じる 大部港の日生フェリー乗り場
この待合所で、喜怒哀楽 悲喜交々があったのだろう。
乗船所。。
小供も病人も 就職も就学も嫁入りも総て、フェリーに乗った。
翌日は島の海岸線をほぼ一周、案外な高い山がある多様な景観
かなり高い所にあった農場 開拓地のような景観
瀬戸内海には無人島を含め大小３千の島があるという
波も少なく、漁業や海運の好条件が偲ばれる
その集積地となる大阪湾の隆盛も、さもありなん
小豆島を離れる坂手港フェリーは神戸まで三時間半かかる
坂手港からの出港は夕暮れまじかの1530分
大型のフェリーは これでも五千トン
「あおい」孫と同名なのがいい
バイクの乗客が多い
乗船すると、その広さに驚く。大型トラックが次々と来る。
船は微動だにしなくて重量で沈み込む様子もない。
それを支えるのは海面であり、表面張力という力学に尽きる。
１５時２０分に坂手港を出航したフェリーは瀬戸内海で日没を迎える
一日を過ごした小豆島が船尾に霞んでいき
その向こうの海に日が沈んでゆく。
その様を乗客がみんな黙って眺めている。
たった一日なのに遠ざかってゆく島影は
愛おしいような感慨を伴う。
想えば戦地へ向かう船から、船尾に霞んでゆく
本土の見え方はどうだったろうか。
この瀬戸内海からS20年４月7日に沖縄特攻に出撃した大和から、
折りしも満開の本土の桜が見え、
皆が甲板から眺めた記述が、学徒動員の吉田満の手記にある。
大和は激闘のうえ沈没し三千有余名が戦死した。
この海には大戦の記憶が沁みついている
日が沈んだ灰色の海が 船の速度で後ろへ去ってゆく
海が暗くなって行き 乗客は客室に戻ってゆく
四国が遠のいていき右舷にはずっと淡路島が見えている。
淡路島は淡路大橋と瀬戸大橋の世界有数の橋で繋がる
神戸港まであと３０分。淡路大橋を見上げようと乗客が上がってくる
淡路大橋をくぐる、橋上は夕刻の渋滞。近代建設の威容を見上げる
西空には残照の残り香・三時間半のフィナーレの淡路大橋を見送る。
フェリーには間もなく神戸港入港のアナウンスが流れる
バイクの人達から先に上陸する。。かっこいいなあ
SRシングルの女性ライダー キック一発でかかるかどうか（笑）
その夜は小豆島から一転して大阪。
カーテン越しの始発電車の音 大都市の鼓動
帰路は京都南部を掠め湖西地方を北上。九頭竜をめざす
あすは今津か長浜か。。琵琶湖周航の唄がうかぶ処
山には山の 憂いあり
海には海の 哀しみや
遺りたる 紅葉は照りて。。
小豆島の海から 一転して 暮れゆく山に浸る
開通したばかりの徳山ダム沿いのトンネルを通る
能郷白山の山麓の深さ
池田町を経て越前大野、荒島岳に見守られ眠る
雪のきた荒島岳 その山頂の一夜を回想し九頭竜をめざす
九頭竜に拘るのは荒島岳、能郷白山の帰りの素晴らしさだった
豪雪地帯ならではの この尾根を歩きたい
米俵。。この地名の物語る歴史
湖底のふるさとへのモニュメント その想い
九頭竜の奥地に秘めた平家岳。。憧れの山 その神秘感
九頭竜への想いの大切な場所
ここに立って昔日の五月を偲ぶ
能郷白山のすばらしい一夜 その帰路..
めくるめく５月の午前 この希望に満ちた陽光と空
尾根を見上げ憧れる 空と接することへの憧れは
山への憧れに通じ 幼いころからの遺伝子のものだ
あの時の希望に満ち溢れた光と空が いま凋落の秋
この四季のある国土が日本人の無常観を生んだのか
心は自然に育まれる
九頭竜からの帰路はいつも白鳥から郡上八幡を経由する
ここに惹かれる人の様々な想いを受け止める街並み
郡上をあとに木曽谷に出て中央高速に乗る
勇壮な甲斐駒を見ると帰ってきた実感がある。
山梨の馴染んだ山並みの慣れ親しんだ居心地の良さ
通過してきた山々や谷筋も 誰かの日常の舞台であることだろう。
いつも16時20分の夕暮れ時になると、西の山なみ遥か500kmの
日生から小豆島へフェリーが出航するさまを偲んだ。
そして11月末のフェリー最終日。あの叔父さんの想いや如何に。。
フェリーの出た頃を見計らって切符売り場に電話し、
叔父さんに「おつかれさま」と伝えてくれと頼んだ。
たとえ電話であっても、あの時間の日生と繋がってみたかった。
翌日からは 50年に渡ったフェリーの往来のない海を想った
地元にとってフェリーは時報代わりだったという
あれから山の夕暮れの頃には 海の様子が浮かんでくる
山で海を想う 海で山を想う
あざみの唄のように 島国であり山国の良さだと想う
執筆者: kazama
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