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2014年08月08日 07時42分 | カテゴリー: 総合

…がんばれ古バス…

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   南アルプス北岳の登山口へ登るバスに乘った。

今はもうあまり見ない長いシフトレバーのいすゞLRである。

狭い林道の急坂というステージは低速トルクが強いディーゼルとボディサイズの小さな旧型バスの独壇場である。

長丁場の登山者の大きなザックが通路にいっぱいになり立つ場所もなくなる。バス好きの私にとってリヤのステップという新鮮な場所の体験になった。


そこは6気筒ディーゼルエンジンの働き場所に近く、エンジンの重厚な鼓動がもろに伝わってくる。それにもまして真夏の気温のなかで急坂に全力を振り絞る熱気は凄まじく、靴底を通しても熱い。アルミのステップだけでなく、手すりのパイプでさえ持ち替えないといけないほど熱くなる。6BGエンジンの職場の苛酷さはどれだけのものだろうか。

守ってくれるのは20L程のエンジンオイルと冷却水だけである。

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   満員の登山者と数日の生活用具一式、乗務員と自らの車重の、その総てを6500CCの120PSというエンジンが支え、ふんばる。長い登り坂の負荷がエンジン音で判る。6個のピストンが、重いクランクが、OHVによるバルブが、直噴の噴射が、それを唯一冷却するポンプとファンがフル稼働する様子が伝わってくる。   ベテラン乗務員の古バスに愛着をもち、その特性を知り尽くしたアクセルワークやダブルクラッチの絶妙なタイミング、、、小型車では味わえないその重厚なドライビング感覚や、この古めのピストンエンジンの力感に私はしびれた。たまらない熱気でさえもその重要な要素だった気がする。

   趣味や職業柄、いろんなエンジンに触れてきた、精巧な高回転高出力エンジンにも魅了された。しかし私はこの2200回転という低速域で働く牛のようなエンジンが好きなんだといまさら思う。   6気筒ディーゼルエンジンがいちばんいい。V8やフラット12とかになると荘厳さが出てきて、魅力はあるが縁遠くなる。6気筒のエンジンがいちばん身近で荷役を担ってきたことからくる愛着なのかもしれない。身近で手に入る6気筒OHVディーゼルとなると、SD33のあれしかない、16インチリングリムの素っ気ないやつ、、、再びふつふつと、許されない煩悩が頭をもたげる。

   登山者達に好天を祈りたいと思う。その快適な登山を支えるものの一つが床下の旧い6気筒エンジンである。その生きた熱気を感じたリヤステップは特等席だった。

執筆者: kazama

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