JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.

〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN

  This is a static page.

2014年08月06日 19時29分 | カテゴリー: 登山

…富士山劇場(3)   トタン板救急車…

20140806-dsc_0013_01.jpg

 砂走りを下り、売店で休んでいたら店主に電話がかかってきた。
話しの様子では八合下辺りで登山者が動けないらしい。2階からまだ寝起きという様相の10代とも思える男が降りてきた。
店主が呼び捨てで救援に行くよう命じたから息子だろう。
息子は「またかよ」と言い.「バカがよぅ」とつぶやいた。
ふてくされた様子でローブの付いた畳ほどのトタン板を出してきた。それに載せて滑り降ろしてくるらしい。
「行ってくるよ」とトタン板をガラガラと引きずり.
うつむいて登っていった。
私は売店を後に1Kmほどを駐車場まで降り.
涼んでから着替えして帰路を出発した。

しばらくして富士山上部の全貌が見渡せる場所がある。
砂走りは下山専用の急勾配の直線である.
登頂を終えた人たちが炎天下に砂ホコリを上げ続々と降りてくる。
その中にぽつんと一人.あの若者がイザリのようにトタン板を引きずって登ってゆく。うつむいて腕組みをして黙々と…炎天下の砂走りを登る人など一人もいない.八合下まではまだまだある。
「苦しいだろうなあ」と思う。
なにを想いながら登るのだろうか…あいつ.やるなあ…
その姿には口先だけの博愛とは対極の.
体を張った行動というものの価値が見える。
「ばかがよぅ」、というあのつぶやき…
あいつにはそれを言う権利がある…そう思った

執筆者: kazama

This post was displayed 1210 times.