JOURNAL SKIN
by : DIGIHOUND L.L.C.
〒658-0001
Higashinada, Kobe, Hyogo JAPAN
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崩落による通行止めのため、甲府から広河原間のバスルートは奈良田経由という大迂回ルートになっていた。
走行距離90km以上、所要時間3時間半近くという長距離路線だった。バス会社にとっては運行経費増、登山者にとっては所要時間1時間30分のタイムロス。自然災害は誰にもいいことはない。
とは言っても一ヶ月半にわたり通い慣れた早川筋のルート、終わるとなればなごり惜しい。
そう思っていたら登山者の中に一人だけ、普通の服装の人がいた。どうやら二度とないこの路線の最終日に乗りに来たバスマニアらしい。気の毒なことに満席に近い賑やかな登山客のなかでどうにも場違いで小さくなっている。マニアのそういう気持ちはよく分かる。
たまたまバイトの車掌としてこの車内を任されたのだから何とか彼の居心地を良くしてあげたいが機会がみつからない。
もう終点に近くなってから声をかけようと近づいたらどうも少し警戒してるようにも見えた。車掌がわざわざ自分のところに来るのは自分の行為に違和感があるからだ、、、そんなふうに取られたかもしれない。
他愛のないやりとりだけだったから彼が降りる時 「わざわざ乗りに来てくれてありがとう」という積りだった。
甲府駅に着き、出口で待っていると彼は反対側の扉から降車したらしく消えていた。
もしかして私を避けたのだろうか、、ほっといてやる、という親切もあったかもしれないと思った。
執筆者: kazama
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